《資産運用の虎の巻》
初心者におすすめの運用方法4つと、
始め方やリスクについて
「資産運用を始めたいけど、どうすればよいのかわからない」という人は多いのではないでしょうか。この記事では、資産運用(金融商品)の種類や投資初心者におすすめの運用方法、資産運用におけるポイントや注意点を解説します。
(1)資産運用の種類
まずは、資産運用に利用される主な金融商品の特徴とメリット・デメリットを解説します。資産運用に利用する金融商品について、理解することから始めましょう。
円預金(普通預金・定期預金)
銀行にお金を預けることで、預けた期間に応じた利息を受け取れる金融商品です。
円預金のメリット
- 流動性が高く、いつでも引き出せる
- 元本保証がある
普通預金や定期預金は、預金保険制度の対象となっています。預金保険制度とは預入先の銀行が破綻しても、預金保険機構により預金者1人あたり「元本1,000万円とその利息」までが保証(保護)される制度です。当座預金など利息のつかない決済用の預金は、元本全額となります。
また、預入期間の決まっている「定期預金」は満期前に引き出さないことを条件に、普通預金よりも高い金利が適用される商品です。満期前の引き出し(中途解約)も可能です。しかし、預入当初にさかのぼって中途解約利率が適用されるため、本来よりも利息は少なくなります。
円預金のデメリット
- ほとんど増えない(収益性が低い)
日本では低金利が続いており、円預金をしても利息はほとんどつかない状況です。
日常の生活費や近いうちに必要となるお金を安全に保有、運用するには適した金融商品ですが、お金を増やすには不向きです。
外貨預金
米ドルやユーロなどの外貨で預金し、利息を受け取ったり為替変動による為替差益を得たりする方法です。
外貨預金のメリット
- 円預金に比べ高金利が期待できる
- 円安になると為替差益が得られる
- 通貨分散効果
日本より金利の高い国の通貨で預金すれば、それだけ多く利息を受け取れます。また、円安になれば為替差益が生じ、円換算で資産が増える点もメリットです。
長期的な資産形成を考える場合は円の価値が下落するリスクに備え、通貨の一部を外貨で保有する通貨分散も重要になります。外貨預金はその一つの方法です。
外貨預金のデメリット
- 為替手数料がかかる
- 円高になると為替差損が生じる
- 元本保証がない
円を外貨に交換するには為替手数料がかかり、運用はマイナスからのスタートです。また、円高になれば為替差損が生じるため、円換算で資産が減ってしまいます。外貨預金は預金保険制度の対象ではなく、預け先金融機関が破綻した際の元本保証がない点にも注意が必要です。
債券
国や地方自治体、企業などの発行する債券を購入し、利息を受け取る方法です。債券には満期があり、満期日まで保有すれば元本が全額戻ってきます。
債券のメリット
- 満期まで決まった利息を受け取れる
- 満期日には元本が全額戻ってくる
債券は満期まで保有していれば元本が返還され、その間に利息が受け取れるため、投資初心者でも利用しやすい商品といえます。
国が個人向けに発行する「個人向け国債」は元本と利息の支払いを国が保証する、安全性の極めて高い金融商品です。最低投資額は1万円から1万円単位で、購入から1年経過すれば中途解約も可能になります。中途解約をしても元本割れはありませんが、直近2回分(1年分)の利息相当額の返還が必要です。
債券のデメリット
- 満期前の売却では、元本割れリスクがある
- 発行体の破綻などによる債務不履行(デフォルト)リスクがある
債券は満期前に売却して換金できます。しかし、債券価格は常に変動しているため、売却により元本割れのリスクがあります(個人向け国債を除く)。
また、債券の発行体が破綻してしまった場合、利息や満期償還金の支払いが予定通りに行われないおそれがあるのです。一般にこのリスクが高い債券ほど、金利は高く設定されています。
株式
企業が発行する株式を購入し、配当金を受け取ったり売買して利益を得たりする方法です。国内株式のほか米国株式や中国株式など、外国株式にも投資できます。
株式のメリット
- 株価の値上がり益(キャピタルゲイン)が期待できる
- 短期間で大きなリターンを狙える
- 配当金(インカムゲイン)が期待できる
- 銘柄によって株主優待が受けられる
株式は価格の変動が大きく、銘柄や投資するタイミング次第では短期間で大きなリターンを狙うことも可能です。
企業の利益は配当金として株主に還元され、株式を保有しているだけでもリターンが得られます。東証プライム市場に上場する銘柄の平均配当利回りは、年2.33%です(2022年6月)。銘柄によっては配当がなかったり、これよりも高い利回りが期待できたりします。
また、株主に自社製品やサービスの優待券などを進呈する株主優待を実施している銘柄もあり、株式投資の魅力の一つといえます。この株主優待は、日本独自の制度です。
株式のデメリット
- 株価の値下がりにより損失を出すリスクがある
- 企業が倒産すると株式は無価値になる
株式投資における最悪のケースは、投資した企業の倒産です。投資先の企業が倒産すれば株式の価値はゼロになり、投資した資金は戻ってきません。倒産には至らなくても業績の悪化や相場全体の下落によって、大きな損失を出すおそれがあります。
投資信託
多くの投資家から集めた資金を、さまざまな投資対象に分散投資する金融商品です。
投資信託のメリット
- 少額から投資できる
- さまざまな投資対象に分散投資できる
- プロのファンドマネージャーに運用を任せられる
投資信託は数千円程度の少額から投資できるケースもあり、分散投資によるリスクの低減効果が期待できます。
投資信託のデメリット
- コスト(手数料)がかかる
- 元本割れのリスクがある
投資信託の取引や運用では、「購入時手数料」「運用管理費用(信託報酬)」などのコスト(手数料)がかかります。投資信託のコストは、投資する商品や購入する金融機関によっても異なるため、商品や金融機関を選ぶ際のポイントになります。
貯蓄性のある生命保険
終身保険や個人年金保険、学資保険など、貯蓄性のある保険商品を資産形成に利用する方法です。
終身保険
死亡時に死亡保険金が支払われる「保障機能」と、解約時に解約返戻金が受け取れる「貯蓄機能」を兼ね備えた保険商品です。
個人年金保険、学資保険
個人年金保険や学資保険は貯蓄機能に重点を置いた保険商品で、払い込んだ保険料に応じて将来年金や学資金の受け取りが可能です。
個人年金保険では年金受取開始前に被保険者が死亡した場合、払込保険料相当額の死亡給付金が遺族に支払われます。学資保険では契約者である親が死亡した場合、以後の保険料の払込が免除される保障機能が備わっているものもあります。
貯蓄性のある生命保険のメリット
- 保障を確保しながら資産形成を進められる
- 生命保険料控除による税負担の軽減効果がある
保障機能と貯蓄機能を兼ね備えた生命保険を利用すれば、死亡時の保障を確保しながら資産形成を進められます。保険料は所得控除の一種である生命保険料控除の対象になり、所得税や住民税が軽減されるメリットもあります。
貯蓄性のある生命保険のデメリット
- 保険料には保障にかかるコストが含まれる
- 契約内容や解約(現金化)するタイミングによって、解約返戻金や満期保険金が払込保険料総額を下回る
- 保険会社が破綻した場合、解約返戻金や満期保険金の削減リスクがある
- 健康状態によっては加入できないことがある
保障機能を備えた生命保険の保険料には、保障にかかるコストが含まれています。契約内容や解約(現金化)するタイミングによっては解約返戻金が払込保険料総額を下回り、元本割れするケースもあります。保障にかかるコストは運用にはマイナスになるので、保障が必要のない人は他の運用方法も検討するとよいでしょう。
(2)初心者におすすめの4つの運用方法と始め方
初心者が資産運用を始めるには、積立投資がおすすめです。ここでは、積立投資におすすめの4つの運用方法(制度)を紹介します。
つみたてNISA
「長期」「積立」「分散」投資をサポートする非課税投資制度です。
利用できる人 | 日本に住む20歳以上※
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非課税対象 | 一定の投資信託へ投資して得られた分配金や譲渡益 |
非課税投資枠 | 新規投資額で年間40万円が上限 |
非課税期間 | 最長20年間 |
投資対象商品 | 長期積立分散投資に適した一定の投資信託 |
口座開設可能数 | 1人1口座(一般NISAとつみたてNISAはどちらか一方のみ) |
年間40万円までの投資で得た利益が最長20年間非課税
つみたてNISAを利用すれば、年間40万円(毎月約3万3,000円)までの投資で得られた利益が非課税になります。商品の買付方法は積立投資のみで非課税期間が最長20年間と長いため、コツコツ積立投資をしていくにはぴったりの制度です。
投資対象は長期積立分散投資に適した投資信託・ETFのみ
投資できる商品は、長期積立分散投資に適した投資信託とETF(上場投資信託)のみです。
- ETF(上場投資信託)について、池田泉州銀行では取扱いがありません。
商品が絞り込まれているため投資初心者でも選びやすく、商品選びで失敗しにくい仕組みになっています。
つみたてNISAは証券会社や銀行など、つみたてNISAを取り扱う金融機関で口座を開設すれば利用できます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
自分で決めた額の掛金を積み立てて運用し、原則60歳以降に受け取る年金制度です。掛金拠出時、運用時、受給時に税制優遇が用意されており、公的年金に上乗せする形で老後資金を効率よく準備できるのが特徴です。
利用できる人 (加入者区分) |
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非課税対象 | 対象商品へ投資して得られた分配金や譲渡益 |
投資可能額 (掛金上限額) |
加入者区分により、1万2,000円~6万8,000円/月 |
非課税期間 | 運用期間中 |
投資対象商品 | 元本確保型商品(預貯金・保険商品)、投資信託
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口座開設可能数 | 1人1口座 |
掛金拠出時 | 掛金全額が所得控除の対象になり、所得税・住民税の負担が軽減される |
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運用時 | 運用益:運用期間中は非課税 積立金:特別法人税の課税対象(現在は課税が凍結されており、非課税) |
受給時 | 年金で受給する場合:公的年金等控除の対象 一時金で受給する場合:退職所得控除の対象 |
原則60歳まで資金の引き出し不可
iDeCoは老後資金を準備するための制度であり、投資した資金は原則60歳まで引き出せません。それまでに必要な資金は、投資しないように気をつけましょう。
iDeCoを利用するには、iDeCoを取り扱う金融機関で加入を申し込みます。会社員や公務員(国民年金第2号被保険者)がiDeCoに加入するには、勤務先から事業主証明書の取得が必要です。
投信積立
毎月決まった日に決まった金額で投資信託を購入していく仕組み(サービス)です。最初に購入する商品や金額を設定すれば毎月指定口座から自動的に購入資金が引き落とされ、投資信託の買い付けがなされます。
まずは「つみたてNISA」や「iDeCo」の利用を検討
投資信託に積立投資する場合、まずは非課税メリットのあるつみたてNISAの利用を検討しましょう。投信積立は、以下の場合などで選択肢となります。
- つみたてNISAの非課税投資枠を使い切って投資資金に余裕がある
- つみたてNISAの対象商品以外に投資したい
投信積立は、投信積立サービスを利用できる金融機関で口座を開設し、積立設定をすれば始められます。
積立預金
毎月一定額を指定口座から自動的に引き落とし、普通預金や定期預金で積立てていく仕組み(サービス)です。近いうちに必要な資金や確実に準備しなければならない資金など、安全性を最優先する資金の運用に適しています。
お金を確実にためるには仕組み作りが大切
お金を確実にためるには、無意識にたまる仕組みを作るのがコツです。残ったお金を貯蓄や投資に回そうとしても、なかなかお金は残りません。
そこで役立つのが、積立預金(積立式定期預金)です。積立預金の引き落とし日を、給料日直後に設定してください。そうすることで給料からまず貯蓄分を差し引き、残ったお金で家計をやりくりする「先取り貯蓄」の仕組みができあがります。
お金をためるのが苦手な人は、お金が自動的にたまる仕組みを作ることから始めましょう。
積立預金は、積立預金サービスを利用できる金融機関で口座を開設し、積立設定をすれば始められます。
(3)資産運用の3つのポイント
資産運用を成功させるために押さえておきたいポイントは、次の3つです。
運用方針(目的・期間)を定める
何のために運用するのか、最終的な目標金額はいくらなのか、それをいつまでに達成したいのか。運用方針・目標が定まれば、そこから逆算して運用方法や商品、必要な投資額を決めやすくなります。
運用方法の選択次第で毎月の積立額は大きく変わる
例えば老後資金として30年後に2,000万円を準備したい場合、積立預金では毎月約5万5,600円の積み立てが必要です。目標が同じでも、投信積立を利用して年利5%で運用できれば、毎月の積立額は約2万7,000円※で済みます。
- 30年後の運用資産は約2,256万円(元本:約972万円、運用益:約1,284万円)、運用益にかかる約20%の税金(約257万円)を差し引き、手元に約2,000万円が残る計算
長期・積立・分散投資
リスクを抑えながら資産を増やしていくには、長期・積立・分散投資が基本です。
株式などのリスク資産へ投資する場合、元本割れのリスクをゼロにはできません。しかし、投資する資産や地域を分散して積立投資を長く続ければ、元本割れする可能性は低くなることがわかっています。
お金が必要になる時期が決まっている場合、なるべく早く投資を始めることが運用期間を長く確保するポイントです。
税制優遇制度を有効活用する
iDeCoやNISAといった非課税投資制度や生命保険料控除など、利用できる税制優遇制度は有効活用しましょう。老後資金準備が目的の場合は、iDeCoやつみたてNISAによる投信積立、個人年金保険などが利用できます。
(4)資産運用のリスク・注意点
最後に、資産運用のリスクや注意点について確認しておきましょう。
主なリスクの種類
資産運用には、主に次のようなリスクがあります。投資する商品によって生じるリスクの種類は異なりますが、その多くが商品の価格を変動させる要因となり運用成果に影響します。
価格変動リスク | 売却時の価格が購入時の価格から変動することによる損益の不確実性 |
---|---|
信用リスク | 投資した会社が将来も存続しているか、商品の元本や利息が将来にわたり支払われるかどうかの不確実性 |
為替変動リスク | 外貨建て金融商品への投資において、為替レートの変動により生じる損益の不確実性 |
カントリーリスク | 商品の発行体の所在する国や地域の政治、経済環境によって変動する信用リスク |
リスクとリターンは表裏一体の関係
投資や資産運用におけるリスクには、「損をする可能性」のほか「リターンの振れ幅」という意味もあります。このリスクとリターンは表裏一体の関係にあり、大きなリターンを狙うにはそれだけ大きなリスクを伴うことを知っておきましょう。
リスク資産での運用は余裕資金で行う
株式のような価格変動の大きなリスク資産での運用は、当面使う予定のない「余裕資金」で行うのが原則です。
住宅購入資金や教育資金など、必要な時期や金額が決まっているお金をリスク資産で運用するのは望ましくありません。これらの資金は積立預金や学資保険など、将来受け取れる金額が決まっている安全性の高い金融商品をベースに運用しましょう。
使い道が決まっているお金であっても10年以上先に必要なお金は、一部をリスク資産で運用してもよいでしょう。
運用で増えたお金(利益)には税金がかかる
運用で得た利益には、通常20.315%の復興特別所得税を含めた税金がかかります。運用益を見込んで資金を準備する場合、実際に手元に残るのは利益の約8割であるという前提で考えましょう。
ただし、つみたてNISAを利用すれば運用益には税金がかかりません。iDeCoの場合受給時には課税されますが、公的年金等控除または退職所得控除によって税負担は大幅に軽減されます。
(5)まとめ
資産運用には安全性や流動性が高く、元本割れのリスクの低い円預金やハイリスクハイリターンな株式投資など、さまざまな方法があります。メリット、デメリットはそれぞれ異なるため、運用の目的や運用資金の性格に合った方法を選びましょう。
著者:竹国 弘城
RAPPORT Consulting Office代表、1級FP技能士、CFP(R)、証券外務員一種
証券会社・生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。ミニマリズムとマネープランニングを融合したシンプルで豊かな暮らしを提案している。
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