ご存知ですか?
自分が認知症になったとき子どもはお金を引き出せない!?
認知症は誰にでも起こりうるもの。そんなときのお金のこと、しっかり考えていますか?そのリスクと解決策について説明します。
(1)認知症患者数とその金融資産について
認知症に関する問題は、あなたやあなたの家族の生活を考えていく上で、決して他人事ではありません。認知症に関する研究は現在進行形で進んではいるものの、残念ながら完全に予防できる方法や完治するための治療法は確立されていないからです。
認知症は、誰でも起こりうるもので、歳を重ねれば重ねるほどそのリスクは高くなっていきます。現在、令和元年簡易生命表※1によると、男性の平均寿命は81.41年、女性の平均寿命は87.45年と、世界トップレベルの日本。そして、2025年には、65歳以上の高齢者の約5人に1人は認知症になり、その数は700万人にものぼると推定されています。あなたや、あなたの家族が認知症になる可能性は決して低くはありません。
認知症の方の数が増えるにあたり、1つの課題となるのが個人の金融資産の管理だと金融庁は提言しています。金融庁によると、2030年の個人金融資産の約1割は認知症の方が保有することとなると試算されているそうです。※2
認知症になった時のための備えとしていくつかの取組はあるものの、金融制度への知識が乏しかったり、使い勝手の良い金融商品やサービスが少なかったりして、個人・金融機関の両方に課題は残っていると言われています。
- 1 令和元年簡易生命表
- 2 金融庁事務局説明資料
なぜ、認知症になると金融資産の管理に問題が発生するのか、イメージしづらい人もいるかもしれません。ここで簡単に、認知症とはどのような状態なのか、なぜ金融資産の管理が問題になるのか解説します。
厚生労働省によると、「認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態」のことを指しています。※3
ここでポイントになるのは、「日常生活に支障を生じる」ということです。お金の管理に関して具体的に言えば、
- 買い物をした時に支払いの方法が分からない
- お金を何に使ったのか覚えていない
- 暗証番号を忘れてATMからの引き出しができない
などがあげられます。
(2)認知症患者の家族はお金を引き出せない
さて、それでは認知症になった本人が預金口座からお金を引き出せなくなった時に困るのは誰でしょうか。実は本人よりも家族が困るケースの方が多いのです。なぜかというと、預金は基本的には本人の代わりに家族が引き出すことができないからです。
例えば、急に入院した場合はどうなるでしょうか。入院すれば入院費がかかります。その費用の支払いは基本的に待ってもらえず、さらに本人は支払いの手続きができないことが多いのです。また病院は意外に盗難が多く、貴重品は持ってこないよう言われるケースもあり、家族が立て替えることが多いようです。このように認知症になった本人が急な支払いに対応できず、家族が代わりに立て替えるということがあるようです。家族には金銭的な負担がかかってしまいます。
では、なぜ家族が引き出すことができないのでしょうか。
引き出せない理由
まず原則として知っておきたいのは、預金は口座名義人である本人が管理するものであるということ。本人の意思確認が行われない限り、家族が引き出すことはできません。
本人に判断能力がある場合は、普通預金においては代理人指名手続や代理人キャッシュカードの作成によって、指定の家族のみ代理人としてお金を引き出すことが可能です。しかし、これはあくまでも、本人に判断能力があると認められた場合に限られます。
既に認知症によって判断能力がない状況にある場合、銀行の判断によっては口座からお金を引き出すことができなくなることも。これは、家族による使い込みや、詐欺・横領などの犯罪に巻き込まれないようにするためという目的があります。
引き出す方法
本人が認知症によって判断能力を失った場合、家族は「成年後見制度」を利用してお金を引き出すことができます。この制度は、判断力のない人のために、適切な支援者を裁判所が選ぶというもので、家庭裁判所への申し立てが必要になります。
申し立てを行った後、調査や審理を経るため実際に預金を引き出せるようになるまでに3ヵ月程度、あるいはそれ以上かかります。
ただし、現在は法定後見人として決定される前でも、本人のための医療費や介護費など使い途が分かるものであれば、家族関係の証明となる書類とともに提出し銀行の窓口でお金を引き出せるケースも多いです。緊急の出費で困った時は、まずは銀行の窓口に相談されることをおすすめします。
(3)リスクに備えた金融商品も
現在は、高齢化に伴うリスクに備えた金融商品も充実してきています。認知症に限らず、高齢になると、「足腰の力が弱くて銀行まで行くことができない」「寝たきりになってサポートがあっても銀行に行けない」「病気で長期入院が必要になった」など、様々な出来事が起こりやすくなります。こうしたリスクに備え、代理人をたてておくことで、家族であっても預金を引き出せるような仕組みが整っているのです。
例えば、信託では財産の一部の管理を家族に委ねることができたり、認知症等によって本人が引き出せなくなっても家族が代わりにお金を引き出すことができたりするなど、万が一の時に家族の立て替えに頼らず生活することができます。信託で出来る管理は財産の一部の管理とすることが出来るのが特徴です。家族といえども財産全体の管理を任せるのではなく、自分で決めた範囲の管理を委ね、近い将来に備えることができるのです。
このように、万が一の時に備えてお金のことを考えておくと、家族の安心にもつながります。今は、終活として自身の葬儀のことまで決めておく人が増えています。自分の考えや意思をきちんと伝えられるうちに、お金の管理のことも決めておきましょう。
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