リバースモーゲージとは?
条件やメリット・デメリットを紹介
リバースモーゲージとは、マイホームを保有している人が自宅に住み続けながら、その自宅を担保に老後資金の借入れを行う制度です。契約者が亡くなった後に担保としていた自宅を処分することで、借入金を返済する仕組みになっています。主に公的機関や民間の金融機関が提供しています。
雑誌やインターネットなどを見てみると、そのメリットが語られる一方で、「リバースモーゲージは危ない」という記事もよく目にします。
リバースモーゲージは本当に危ない金融商品なのでしょうか。
あらためてリバースモーゲージのメリット・デメリットについて紹介します。
(1)リバースモーゲージの基礎知識
まず基礎知識として、リバースモーゲージがどのような商品なのか、その仕組みを知っておきましょう。
リバースモーゲージは、自宅に住み続けながら、自宅を担保に融資を受けられるシニア世代向けのローン商品です。
自宅に住みながら、その自宅を担保にお金を借入れるという意味では住宅ローンと同じですが、住宅ローンの場合は最初にまとまった融資を受け、その元金と利息を毎月返済していきます。それに対し、リバースモーゲージは自宅の評価額から算出された融資枠内で毎月もしくは一括で融資を受け、契約期間中は利息のみを返済し、契約終了後または契約者(債務者)の死亡後に元金をまとめて返済します。
元金の返済方法としては「担保の自宅を売却する」「自己資金で返済する」などがあります。
元金を最後にまとめて返すという一般的なローンと逆の性格を持つことから、「逆」を意味する「リバース」という名称が付いています。ちなみに「モーゲージ」は「抵当・担保」の意味です。
自宅に住み続けながら、老後資金を借入れることができ、しかも月々の負担は少なくて済むのがリバースモーゲージです。
(2)リバースモーゲージの仕組みと種類
リバースモーゲージは、自宅の評価額の50〜80%程度を上限として、資金を借入れすることができます。主に住宅金融支援機構や都道府県の社会福祉協議会などの公的機関、民間の金融機関がサービスを提供しています。
借入金を受取る方法は、一般的に、@一括でまとめて受取る、A定期的に一定の金額を受取る、B契約金額の範囲内で必要なタイミングに必要な金額を受取るなどがあります。
返済は、契約者が亡くなった後に一括して、担保の自宅を売却したり、相続人の手元資金や相続財産などの自己資金で行うほか、契約期間中でも余裕ができた際は繰上返済を行うことが可能な場合もあります。
住宅ローンとの違いは?
自宅に住みながら、その自宅を担保に融資を受けられるという意味では住宅ローンと同じ、と感じる人もいるでしょう。住宅ローンとの違いは、返済にあります。住宅ローンの場合は最初にまとまった融資を受け、その元金と利息を毎月返済していくのに対し、リバースモーゲージは自宅の評価額から算出された融資枠内で融資を受け、契約期間中は利息のみを支払い、契約終了後または契約者(債務者)の死亡後に元金をまとめて返済するものです。
なお、元金の返済方法としては「担保の自宅を売却する」「自己資金で返済する」などがあります。
公的機関と民間のリバースモーゲージの違い
公的機関や民間の金融機関がリバースモーゲージを取扱っていますが、基本的な仕組みに違いはありません。異なる点は、金利と条件です。
公的機関は民間に比べ金利が低く設定される傾向があり、自治体によっては無利息で提供されている場合もあります。その反面、年齢条件が厳しかったり、非課税世帯などの利用条件が設定されることもありますので、対象となるかどうか確認が必要です。
(3)リバースモーゲージの利用条件と向いている人は?
リバースモーゲージを利用するためには、どのような条件があるのでしょうか。また、向いている人についてご紹介します。
リバースモーゲージの条件
リバースモーゲージの条件は、利用する機関によって異なりますが、一般的に年齢制限があります。60歳以上に設定されていることが多いのですが、場合によってはより厳しい条件となることもあります。
リバースモーゲージの主な使いみちとして以下のようなものがあります。
- 老後の生活資金や医療、介護費用
- 住宅ローンの残債支払い(借換え)
- 新居への住み替え
- 老人ホームの入居一時金
- 自宅のリフォーム費用
- 趣味やレジャーへの活用
- 子どもや孫の支援
これらの資金使途も公的機関と民間の金融機関ではそれぞれ限定されていることがあります。
地方自治体の社会福祉協議会が提供するリバースモーゲージは、目的が自立支援となるため、老後の生活資金のみの利用となります。
住宅金融支援機構のリバースモーゲージ(リ・バース60)は、以下のような住まいに関する使いみちに限定されています。
- 本人が居住する住宅の建設、購入
- 自宅のリフォーム費用
- 高齢者向け住宅への入居一時金
- 住宅ローンの借換え
- 子世帯などの住宅建設、購入資金
民間の金融機関のリバースモーゲージは、住まいに関する使途に限定したものから事業用資金や投資目的以外であれば原則自由となっているものまで幅広い使いみちに対応していることが多いです。
また、リバースモーゲージの条件には、単身か、夫婦で居住しているかなどの同居家族構成の条件が決められていることもあります。
リバースモーゲージ利用に向いている人は?
自宅を担保とするリバースモーゲージは、まず自宅を所有していることが前提です。資産として自宅を持っているものの、思ったより年金がもらえず安定した生活資金が不足する人などに向いているでしょう。また、子どもがいないなど自宅の相続を考えていない人にも向いています。
(4)リバースモーゲージのメリットとデメリット
リバースモーゲージには、どのようなメリットがあるのでしょうか?また、良い面ばかりだけでなく、知っておきたいデメリット面についても解説します。
リバースモーゲージのメリット
リバースモーゲージのメリットとして、まず挙げられるのが、住宅や土地を担保に自宅に住み続けながらも老後資金の借入れが可能なことです。会社を退社し年金収入だけになると、借入れが難しくなることが多く経済的に不安を抱えることもあるでしょう。慣れ親しんだ家に住み続けながらも、すぐに使えるお金を準備することができれば安心して暮らしていくことができます。
また、毎月の負担は利息のみであることや、まとまった資金を残し居住環境を確保しながら、老後資金に備えることができる点もメリットといえるでしょう。
リバースモーゲージのデメリット
リバースモーゲージにも、もちろんデメリットがあります。まずは、利息負担です。利息のみとはいえ、契約期間中、お借入残高がある限りは毎月利息負担が発生することはデメリットといえるでしょう。金利が変動となっている商品も多く、途中で金利が上がる可能性もあるため、契約時の利息金額から増加する可能性も考えておく必要があります。
また、リバースモーゲージだけに限りませんが、年々平均寿命が延びている状況で、長生きのリスクもあります。長生きしている分、生活するだけのお金は必要になりますので、最初に設定された融資限度額では不足してしまう可能性も考えておかなければなりません。
(5)こんな人、こんなケースなら、メリットもたくさん
リバースモーゲージのメリットは、高齢者の方が自宅に住み続けながら、月々の負担は少なく、老後資金の融資を受けられること。なかでも、特にメリットを感じられるケースを挙げてみました。
住宅ローンの返済が負担になっている人
定年退職後も月々の住宅ローンが残っており、その返済が負担となっている場合は、リバースモーゲージを利用して借換えを行うという方法があります。住宅ローンは元金と利息を支払わなくてはなりませんでしたが、リバースモーゲージなら利息の支払いのみでOK。月々の負担を軽減できます。
子どもがおらず、セカンドライフを充実させたい人
ご自宅を子どもに残す必要がなく、老後は夫婦揃って楽しみたいという人にもリバースモーゲージは最適です。年金の不足分を補えるのはもちろん、旅行などのレジャー資金や、病気や要介護になった時の備えとして貯めておくなど、多目的に利用できます。ただし、金融機関によっては使いみちを限定しているものもあります。
将来は有料老人ホームなどに入ろうと考えている人
いまは自宅で暮らしているものの、将来、思うように身体が動かなくなってきたり、配偶者が亡くなって一人になった時などは、日常生活をサポートしてくれる有料老人ホーム等に入居しようと考えている人にもおすすめです。その時が来たら、ご自宅は残したまま、リバースモーゲージでまとまった金額を借入れて、有料老人ホーム等の入居金の一部に充てることができます。
このほかにもリバースモーゲージのメリットが発揮される場面はいろいろあります。
とはいえ、前述したように、決してリスクがないわけではありませんし、場合によってはお子さまなど相続人にも影響を及ぼしかねない商品であることも事実です。
リバースモーゲージの利用に際しては、そのメリット・デメリットをきちんと把握したうえで、お子さまを含めたご家族などとよく話し合って決断されることをおすすめします。
(6)リバースモーゲージって本当に危ないの?
では、なぜリバースモーゲージは危ないといわれるのでしょう。確かに金融商品である以上、リスクが伴うのは事実です。リバースモーゲージには次の3大リスクがあるといわれています。
金利上昇のリスク
リバースモーゲージは変動金利を採用することが多くなります。そのため、契約期間中に金利が上昇するというケースがあります。すると、当初の想定より融資を受けられる金額が少なくなってしまったり、月々支払う利息負担が増えてしまうといったリスクがあります。
しかし、変動金利の金融商品はほかにもたくさんあり、リバースモーゲージに限ったリスクとはいえません。
担保評価下落のリスク
リバースモーゲージの融資額は、自宅の担保評価額に応じて決まります。この担保評価額は一定ではなく、基本的に毎年見直しが行われます。そのため、何らかの理由によって自宅の不動産価値が下がると、それに応じて融資限度額も下がってしまうというリスクがあります。もしも借入残高が融資限度額を上回ってしまった場合は、超過分を返済しなければならず、場合によっては予定より早く自宅を手放さなくてはならなくなることがあります。
長生きのリスク
長寿は喜ばしいことなのですが、リバースモーゲージの商品特性上、長生きしすぎると存命中に借入残高が融資限度額を超えてしまうケースがあります。その場合、融資が途絶えるうえに超過分を返済しなければならず、手元資金がない場合は、存命中でも自宅を売却しなければならないことがあります。
そのほか、契約者本人が死亡した場合、残された配偶者は家を出なくてはならないといった「配偶者のリスク」を挙げている記事もあります。しかし、金融機関にもよりますが、大抵の場合、配偶者が借入れを引継いでそのまま自宅に住み続けることが可能です。ただし、引継ぎには条件や審査があります。
上記3大リスクを読んで、恐ろしく感じた人もいるかもしれませんが、ある程度のリスクは考慮したうえで商品設計されています。
(7)「リースバック」と「リバースモーゲージ」は、何が違うの?
リバースモーゲージと似たものとして、リースバックがあります。
この2つの違いは所有権です。リバースモーゲージは、自宅を所有したまま、自宅を担保としてお金を借りることができる商品です。対して、リースバックは自宅を売却して代金を受取る商品です。そのため、所有権は買主に移ることになります。
また、リースバックも、リバースモーゲージ同様、自宅に住み続けることができますが、自宅は売却するため、売却後は賃貸として家賃を払わなければなりません。立地条件にもよりますが、賃貸で大きな金額を払い続けなければならなくなる可能性もあります。
リースバックは資金の借入れではなく、自宅を売却し資金を調達するため、資金使途を制限されることはありません。リバースモーゲージと比べ自由度も比較的高くなるでしょう。しかし、金融機関でのリバースモーゲージは、事業用資金や投資目的以外であれば原則自由となっているものも多くあります。ご自身の条件と合ったものを検討するとよいでしょう。
(8)安心で過ごしやすく。 セカンドライフの住まい。
リバースモーゲージは自宅に住み続けながら老後資金の準備ができるので、利用することでより安心に充実したセカンドライフを過ごせるかもしれません。
例えば、自宅のリフォームを実現することも。段差をなくしバリアフリーにしたり、1階に生活拠点を移したり、今後も長く住み続けられる自宅にすることで、居住環境の不安を軽減できます。また、住宅ローンを借換えることで毎月の返済負担を軽減し、余裕のある生活に。医療費等急な出費に備えておき、資金面で不安を減らすこともできます。
セカンドライフを充実させるために安心で過ごしやすい環境を整えておくことが大切なのではないでしょうか。
(9)まとめ
リバースモーゲージの以下のような点についてご紹介しました。
- リバースモーゲージの基礎知識
- リバースモーゲージの利用条件と向いている人
- リバースモーゲージのメリット、デメリット
- リバースモーゲージのメリットを受けられるケース
- リバースモーゲージは危ないか?
- リースバックとリバースモーゲージの違い
シニアになってくると、現役世代の時と比べて経済的に不安を感じることもあるでしょう。しかし、マイホームという不動産があるのであれば、リバースモーゲージを利用することで融資を受けることが可能です。
リバースモーゲージの条件や資金用途などは、公的機関か民間の金融機関かで異なります。また、金利上昇や担保評価下落のリスクなどのデメリット面も存在します。しかし、毎月の返済は利息のみなので、老後の生活資金に不安がある方には、まとまった資金を残し居住環境を確保しながら、老後資金の減少を遅らせることができるメリット面も充分あります。状況に応じて、上手に利用するとよいでしょう。
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